== 【ひと】として芯がしっかりとした考え方と道徳心を持った【心】が豊でなければ会社を経営してはなりません。==
その時は突然にやってきました。もっと時間があるとばかりに思っていました。死を迎えるその瞬間まで、一生懸命に生きた父親から受け取った、私への最後の【無言のメッセージ】だったような気がします。
今までの人生が時間とともに色あせていき、【間に合わなかった…】という後悔の念だけが重くのしかかるようになりました。それは、私にとっての大きな【パラダイムシフト】でした。
―― 私は元に戻すことができない、人生の優先順位を大きく間違えてしまった ――
1888年、ドイツのハガキに描かれた作者不明の【嫁と義母(よめとぎぼ、My Wife and My Mother-In-Law)】という【隠し絵】(右上の挿絵:参照)があります。
時代とともに幾度となく改作され、世界的にベストセラーとなったビジネスの著書「7つの習慣」でも引用されました。
日本では多くの場合「若い女性と老婆」と訳されているようですが、何も知らずに、この絵を初めて見た人は、若い世代では【若い女性】を、そして、年配の世代では【老婆】を最初に認知する割合が高い、という傾向にあります。
興味深いことに【若い女性】と認識した場合、もう一人の人物である【老婆】には殆どの場合気がつくこともなく【若い女性】!と思い込んでしまいます。もし【老婆】と認識した場合、もう一人の人物である【若い女性】には気がつくこともなく【老婆】!と、同じように、思い込んでしまいます。
この【隠し絵】の例の様に、同じ絵を見ているにも関わらず、【ひと】は必ずしも同じ絵を感じ取っているのではありません。
しかも、どのように見えているかによって、【ひと】は自らの行動に無意識に反応をしています。
この絵の女性を【若い女性】と受け取った人には、この絵の女性を【老婆】と受け取った人とは、当然の事ですが、意見がかみ合いません。
―― 理解していたつもりになっていた ――
この絵を【若い女性】と認識してしまえば、【若い女性】に立った立場で相手を思いやることでしょうし、また、お仕事であれば、【若い女性】向きのサービスを薦めることでしょう。
もし、この女性を【老婆】と受け取っていたならば、この【老婆】に対する思いやりや、サービスの優先順位も、全く違ったものになっていたことでしょう。
そして、もっと重大なことは、この【老婆】にとっては、【時間的な余裕】も残されてはいない・・・、と言うこと。当然、彼女にとっての優先順位も違ってくるわけです。
私の父親に当てはめて考えれば、最悪シナリオでは、取り返しのつかない事態も考えられる、、、と、そう思うべきでした。そうして実際に不幸が起こってしまいました。
―― その日からどういう訳か、走馬灯の様に ――
自分が物心ついた時から現在に至るまでの自分と父親や家族、仕事を通して出会った方々や出来事が脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、まるで検証作業をしているかのような、それは3年以上経っても続いていました。
後悔の念に悩み苦しみながらも、段々と、それらが父親からの【贈り物】のように思えてきました。一生懸命に生きた父親から受け取った、私への最後の【無言のメッセージ】。
== 【ひと】として芯がしっかりとした考え方と道徳心を持った【心】が豊でなければ会社を経営してはなりません。==
== 事の大小はあったとしても「何のために仕事をしているのか?」、「何のために会社を経営しているのか?」常日頃から自らに問い続けるべきです。うまくいかないのは得てして仕事そのものではなく、物事をどう捉えているかによることのほうが多いのです。 ==
会社は【公の器】であり、法と倫理(人として守り行うべき道で、思想だけではなく行動面も重視。また、善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの)に則って運営されてしかるべきです。
―― 【金】でつながった人間関係は脆くて崩れやすいもの ――
時として、残念なことに、業績を社員の皆さんとともに倍々に伸ばしても、経営者が色情に走って散財することで【人の和】が壊れたり、または瞬間風速で出している業績を、長年の実力と勘違いをして、傲慢さから身勝手な豪遊で散財を繰り返すこともあります。
また、そういったことが元で【ひとの心】も離れてしまい、結果、業績が極度に悪化して現金も不足がちになると、今度は、なりふり構わずに非人道的な行動を繰り返し、社員や関係者を踏み台にしてでも【金】にしがみつこうとする卑怯な経営者も実際には存在しています。酷い時には逆恨みから復讐に走るケースも・・・。
そうなってしまった場合、いつも巻き込まれてしまうのは社員さんやその家族、そして志を同じくして走っていた方々であって、多くの場合、彼らは被害者になってしまいます。
私には、どうしてもこの【構図】に納得がいきません。胆略的な事では決してうまくはいかず、それは経営者としてではなく、それ以前に【ひとりの人】として【正々堂々】と、どうであるかを常に考え続けていかなければなりません。
―― 一に人、二に人、三に人。大切な時間も先送りしてはいけない ――
【金】でつながった人間関係は脆くて崩れやすいものです。そこに人生の生きている意義を見出すことは私には出来ません。私は自分が死ぬときに【金】を残すより、真に社会で役に立つ【人】を残しておきたいと、そう思うようになりました。
そして悔しいかな私がこの道を志すようになった時から実に30年以上も過ぎてしまいました。どれだけ大切な時間を先送りして来てしまったことか。
―― 真に社会で役に立つ人格と行動の形成に寄与したい ――
【仕事】は今の生活を支えるため。【人創り】は未来の社会を支えるため。
そして、歩んできた道の出会いの数だけ【感謝】がある。
【人生を共有】させて戴いているみな様に感謝しつつ、願わくば【人創り】の役割を共に担わせて戴きたく切にお願い申し上げる次第です。
BMG江藤知明